コミックス・コード |
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「コミック版PpGの形態」で説明したように、パワパフコミックには必ずついているのが、このマーク。「コミックス・コード(Comics Code)」 正確にはコミックス・コード局(Comics Code Authority)の認定マーク。 ここではもうちょっとコレについて深く掘り下げてみたい。 |
コミックス・コードとはなにか? アメコミは一時「少年犯罪を助長する」とかいってパッシングをうけた時期があって、それ以来、コミックにはこのマークがつく(コミックス・コードの認定を必要とする)こととなりました。 で、その内容というのは大きく三項目あって<犯罪項目><ホラー項目><その他の項目>。 まず、 <犯罪項目> 犯罪を助長するような表現はダメってのはともかく、犯罪者は醜く、警官、裁判官とかをバカにするようなこともダメで、犯罪者は必ず裁かれなくてはいけない。 ようするに、ノーテンキで単純な勧善懲悪ものじゃなきゃダメってことだ。殴ってもふっとぶだけで、血もでなきゃ、腕もちぎれない。カッコイイ悪役キャラなんて言語道断。 当然、これでゆくと、「怪盗」が主役なんて話は無理だし、歴史モノなんて絶対描けそうもない。 次に<ホラー項目> タイトルに「恐怖(HORROR,TERROR)」は使うな。当然流血シーンは御法度、不快、堕落や情欲、エログロ・サドマゾ全部ダメ。さらに、ゾンビ、吸血鬼、グール、狼男もダメ〜! っておい!ようするにホラーや怪奇ものは、はなっからダメってことじゃん! これでいったら、キャスパーのような、おこちゃま幽霊が出てドタバタするだけの話しかできないことは明白。恨みでもあるのか!ってくらい徹底してます。 そして、<その他の項目> まずはセリフなんだけど、冒涜、ワイセツ、下品な言葉はイカンし、スラングもほどほどにしとけよ。 実はさらにおまけがあって、コミックに入る広告も規制してます。 まあ、なんとなくわかるでしょうが、いわゆる「青少年に悪影響をあたえる好ましくないもの」の典型ですね。日本でもこのてのものがやり玉にあがりますが、どの国でも同じなんだなあと。こんなコードのない日本でも、クレヨンしんちゃんは親をバカにしてるからけしからん、だとか、Drスランプの山吹先生は色っぽすぎるとか、アホな話はよく聞くものです。 しかし、実際に管理局を作って規制しちゃうところが、さすがアメリカ! ※上記のコミックス・コードの内容に関する記述は私のかなり偏った意訳ですので、正確な記述を知りたい人はこちらを参照ください。Comics Code(TEXT:英語:シフトJIS,CR+LF) また、このコードは年々改正されてきたと聞きますので、当初のころの内容と同一であるかどうかはわかりません。でも改正されてもコレだものなあ。 |
その歴史 とは言っても、これをアメリカの国民性と言っちゃうのは、あまりに偏見だったりします。こういったパッシングがおきた歴史的原因というのもキチンとふまえなければフェアじゃないでしょう。 50年代に「コミックスの魔女狩り」とも言われる、アメコミへの大パッシングがおこりました。 さらに1954年に同博士が書いた「The Seduction of the Innocent(無垢なる者たちへの誘惑)」という本の発行によってトドメを刺され、出版社らがコミックス・コード局という自主的な検閲組織を設置することなったわけです。これによりアメコミは検閲されるべき「有害図書」となった。 この手の「暴力」やら「エロス」やらに対して批判的な方々というのはいつの時代でも、どの国でもいるわけで、かくゆう日本でもちょっとしたパッシングはあったんですよ。特にその槍玉にあがったのは誰あろう手塚治虫だったりします。ハダカは出すわ、近親相姦をにおわすわ、両性具有はでるわ、植物人間(植物生物)の少女を食べるわ、大量に人は死ぬわ、この時代からやってたんだからさすが漫画の神。今の扱いみると当時のパッシングとかってなんか笑っちゃうよね。 そんな、「マンガなんか読んでるとバカになる」的風潮はともにあったものの、やはりエライ先生が発表したって違いが大きいんじゃないかと思うわけです。が、そういう研究してる学者がいたってこと自体がアメリカならでは、かもしれませんね。ちょうど時代もアカ狩り(こちらは映画史とか詳しい人にはピンとくるかな)とかもあった時なんで、全体としてヒステリックにないやすい風潮もあったんでしょう。 これによって、上記コードを見てもわかるように怪奇系は壊滅においこまれ、残ったのは現実味のない脳天気なスーパーヒーローモノばかりになってしまったわけです。日本と同じように様々なテーマやジャンルにアメコミも広がりつつあっただけに、もしこれが無かったらと思わずにはいられない。逆に日本でこれがあったらと思うとそら恐ろしい思いです。サスケもデビルマンも鬼太郎もゴルゴ13も生まれてこなかったかもしれません。少女漫画だってどうなったことやら。 この時代の印象が偏見として残っているのか、いまだにアメコミといえば単純な勧善懲悪の筋肉バカのヒーローモノといった風に見られている部分があるのは残念なことです。日本でよくやられているアメコミパロディの典型がそんな感じ。のらくろのパロディをしているみたいなもので、今時そんなアメコミないっちゅーの(・・・あったりして)。まあ、それはそれでいいんですけど<どっちや! とはいえ、法令ではないので、このコード認証を受けなくても発行することはできました。ただ、それだとスタンド(この時代コミックは書店には置かれない)に置いてもらえないので、実質的な社会制裁として機能してるわけです。でも、それでも人間の創作への欲求をとどめることはできず、そういった認可のないコミックは特殊な場所で売られ、アンダーグラウンドを舞台として発達していきます。 こうして衰退してゆくかに見えたアメコミですが、その後アメコミ史でいうところの「シルバーエイジ」が幕を開け活気づいていくのですが、それはまた別の話・・・(コナン・ザ・バーバリアン風に) |
そして現在 今のアメコミはそんな牧歌的なコミックのほうが珍しいくらい、多様な広がりを持っています。たしかにスーパーヒーローモノがいまだに圧倒的ですが、その中で社会問題を扱っていたり、悩んだり、単純な勧善懲悪ものではなくなっています。 まあ日本の少年漫画もヒーローモノ(対決モノ)が主流であることを考えれば、アメコミもまたスーパーヒーローモノが主流っていうのも別におかしな話でもないでしょうね。最近はグッズの展開もセットになっていることも多いので、商業的にはそうなってしまうのもうなずける話。 しかし、現在は日本の漫画にせまる勢いで多様に広がっています。当然様々な表現や物語を描こうと思えばコミックコードなんて馬鹿馬鹿しい話。大手でも高年齢層向けのレーベルをガンガンだしてます。もちろんそれらにはコミックコード認定印はついていません。コミックショップというコミック専門店の登場により流通が確保されたため、以前のように売り場に困ることはなくなったわけです。 大手中の大手マーヴルも2001年には公式にこのコミックコードと決別し、いまやこんなマークはついていません。ふと気が付けば、このマークが入ってるアメコミの方が珍しいくらい! まあ、実際この認定印がついていてもコードの額面通りになんて守ってなかったりしてますんで、もはや有名無実化している感があるのは否めません。だいたい、こんなのなくても何も影響がなかったってのは、すでにマーヴルが証明しているわけです。そもそも、この規制によってアメリカでは少年犯罪が劇的に減少したって話は聞きませんし、はなから無意味なものだったと言えるでしょう。(犯罪は低下しなかったが、文化は停滞させた) そんな中、律儀なDCから刊行されているパワパフコミックには付いているわけですが、単に付いているってだけでさほど意味はなかったりします。あえて意味を持たせるなら、逆《X指定》《R指定》とでも言うべきでしょうか、《年少者向け》もしくは《全年齢対象》といった意味くらいは見いだせるかもしれません。 さて、そこで日本です。 「青少年有害社会環境対策基本法案」なんてのが持ち上がってきてますが・・・
おいおい、えらい抽象的だな。これに比べると良くも悪くも、細かく具体的に記述してるのがアメリカらしい。まあこれは「案」の段階なんでこんなものかもしれないが、これじゃ論議のしようがありませんね。 それはともかく、こういったものが何の意味もないことはすでにアメリカのコミックコード騒ぎでわかっているというのに、なんなんでしょう。しかもアメコミ界ではこういう規制から脱却しようというところにきているのに、いまさら日本がこれですか? そんなわけで、どっかでも書いたけど、日本の有識者は「アメコミ読め!」ってこと。 |
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